煎茶(せんちゃ)
日本で生産されているお茶の80%を占め、茶葉の中で一番種類も多く日常よく飲まれています。品質も上級、中級、並級といろいろあり、若芽を摘んだ新鮮な香りのある上級のものは趣味・嗜好用・来客用などに使われ、中級のものも接待用や一般的な食後の一服として楽しまれています。さわやかな香りと甘味の中に淡い渋味があるのが特徴で、その茶味は、男性的であるとよく表現されます。うま味と渋味がほどよく調和したさわやかなおいしさをもつ見た目にも鮮やかなお茶です。 四月下旬から五月上旬にかけて摘んだ新芽と若葉を、蒸気で蒸し手または、機械で、よく揉んで乾燥させてつくられます。葉は、よく日光に照らされ育つため葉肉も厚く、濃緑色で、香りも高い。玉露に比べ、熱に壊れにくい性質をもつビタミンCを含み、また最近では、O-157にも効果のあるカテキンの殺菌力が注目をあつめてます。
玉露 (ぎょくろ)
新芽が伸び始めた頃の茶畑によしずやこもで覆いをして直射日光をさえぎって育てて、摘んで、蒸して揉んだ茶。(被覆期間が1週間から10日間程度たお茶を冠茶という)鮮やかな色合いと豊潤な風味が特徴の高級緑茶。 樹種も、特に優秀で樹齢が高いものが選ばれ、肥料はじめ管理一般に特別な配慮がなされ、その製品は緑茶の中の最高級品ともいえる。煎茶に比べて、色素のアミノ酸の含有量が多く、タンニン等渋味を呈する成分は少ない為、緑が鮮やかで特有の甘みがある。煎茶が男性的なのに対し、玉露は女性的な柔らかさに特徴がある。広大な茶園によしず張りを作るのは容易ではなく、さらに一枚ずつ手で摘み取ったりするので大量には作れない。 玉露は日本茶の中でも最高級品で、おいしく上手にいれられた玉露の香りとふくよかな甘味は一種独特です。その濃厚な味ゆえゴクゴクと大量に飲むお茶ではなく、小ぶりの湯のみで楽しむ嗜好品的色彩の強いお茶です。 さらに、うまみ成分とされるテアニン(アミノ酸の一種)をとても多く含んでいるために、脳のリラックス効果など、うれしい効能も期待できます。
番茶 (ばんちゃ)
茶葉の下部の大きく硬くなったものを主原料とするお茶。サラッとした味わいと香りが特徴。
番茶といってもその種類は川柳・柳・京番茶などいろいろありますが、一般的には二番茶以降に摘まれる遅摘みの並級品のお茶のことをいいます。煎茶にくらべると甘みは少ないですが、その分スッキリとした香りと味わいをもち、食事時の熱い番茶は一般家庭や会社の社員用のお茶として幅広く飲まれています。
茎茶 (くきちゃ)
お茶の精製加工中に選別・分離された茎の部分を集めたもの。玉露の茎茶を”雁音(白折)”といい、量的にも少なく希少価値がある。お茶の出はよくないが、ほのかな甘みと特殊な軽い渋味があり継続的に好む人が多く、 葉の茶味と異なる個性的な味わいに愛喫者も多い。
玄米茶 (玄米茶)
高級番茶または下級煎茶に炒った玄米を混ぜたもの。 混合率は、店によって異なるが、半量くらいまでの物が多いようである。香ばしさとすっきりした味わいが特徴です。また、玄米がはいっているのでビタミンB1が含まれています。
焙じ茶 (ほうじ茶)
番茶を強火で焙じて(機械の場合は約百七十度で七分くらい)、特有の香味を持たせたもの。香ばしくさっぱりした香りと味、茶色の水色が特徴。原料としては、番茶の他、川柳や煎茶の並品、茎茶なども用いられる。焙じてからの時間の短いものほど香りがよいので、自宅で焙じるのが最上であるが、市販のものを求める場合は加工をしている店で少量ずつ求めるのがよい。 ほうじ茶は番茶同様、カフェインやタンニンが少ないので、お茶を飲むと眠れなくなるといった人や、病中・病後の人、小さな子供にも安心して飲ますことができます。ほうじ茶は番茶をほうじたものなので、湿らせてしまった番茶もほうじることによって、おいしく香ばしいほうじ茶としてよみがえります。
芽茶 (めちゃ)
茶の樹の若芽は、葉でなく、尖った芯の形をしており、玉露や煎茶を選別する際に、この芽の部分だけを選び出したもの。独特の濃い味がある。 香りが強く濃厚な味なので、頭をスッキリさせたい時などにはピッタリのお茶です。
抹茶 (まっちゃ)
抹茶はお茶の葉がもつ成分のすべてを味わえるお茶で、抹茶のもつ豊富なミネラルやビタミンなどは美容・健康によい自然食品として世の中で注目を集めています。抹茶は玉露と同じように覆いをかぶせて直射日光を遮断して栽培された茶葉を、蒸した後バラバラにし、熱を加えて乾燥させ、石臼で粉状にひいたものです。茎や軸をていねいに取り去り、葉肉の部分だけを用いて作る。粉末なので変質しやすいため、一時に大量に入手するのではなく、製茶している店から直接少量ずつ求めるとよい。濃茶、薄茶の違いは、育てた場所、手のかけ方によって生じた味の差によるものである。 この粉末状でのお茶の飲み方は中国から伝えられてきました
粉茶 (こなちゃ)
煎茶や玉露を作る際に生じた粉末を集めた茶。すし屋でよく使われている。粉茶よりもさらに細かい粉塵は、カフェイン製造などの工業原料に回される。
こだわりのお茶をいただくポイント
お茶の味の基本的な決め手になるものが水があります。日本でお茶が盛んになったのも、日本の水がよいからといえます。最近はほとんどの家庭では水道水を使っていますが、都会の水道水のようにカルキが強い水は、お茶の香りがとんでしまうばかりでなく、緑茶に含まれるビタミンCも水道水の塩素に破壊されてしまうのでお茶にはよくありません。そこで、日常使う水道の水でお茶をおいしくいれるためには、浄水器をつけてろ過する、半日ぐらい汲置きしたものを使う、水は必ず3分間ぐらい沸騰させて使うなどの方法を用い、お茶をいれる水に気を配ることが大切です。
温度にこだわる
お茶の味を決めるうま味であるアミノ酸は、湯温が60度ぐらいで溶けはじめ、また渋味のカテキンはそれより高く80度ぐらいで溶け出します。渋味がまさるとせっかくのうま味がうすれてしまうので、うま味と渋味をほどよく調和させる湯温と浸出時間がおいしいお茶を飲むためのたいせつな要素となっています。 玉露や高級煎茶ほどカフェイン、カテキン、アミノ酸、ビタミンCなどを多く含んでおり、お茶は品質の高いものほど湯の温度を低くします。
入れ方にこだわる
- 手掴みでお茶の葉を扱う場合、手はよく洗っておきましょう
- 急須・湯飲茶碗は温めて用ます
- 濃い目のお茶は小ぶりの湯飲茶碗で、薄目のお茶は大ぶりの湯飲茶碗を用意します
- 沸騰させきった(4~5分は沸騰させ続ける)お湯を冷まして使用する
- お茶の色が均等になるように回し注ぐ
- お湯は入れる度にしっかり注ぎきってしまうこと(急須の中に湯を絶対に残さない)
- 焦らずに時間をかけてゆっくり茶の葉の成分を引き出すこと
煎茶・玉露のおいしい入れ方
- まず湯飲茶碗にお湯を注いでお湯を休ませておきます (煎茶:70 ~ 80度 玉露:40 ~50度)
- 急須にお茶の葉を入れます (1人分3g-大匙1杯-が目安)
- 湯飲茶碗で休ませておいたお湯を、急須に注いでください
- 1~3分程度待ちます 目安( 煎茶の上級茶は3分程度、中下級茶は1分を程度、玉露は3分程度 )
- 湯飲茶碗に注ぎます。
番茶・玄米茶・ほうじ茶・茎茶のおいしい入れ方
- 急須にお茶の葉を入れます ( 1人分4g-大さじ1杯強-が目安)
- 急須に直接90~100度のお湯を注ぎます
- 3~4分程度待ちます
- 湯飲茶碗に注ぎます
冷やし緑茶のおいしい入れ方
- たっぷりの玉露を大き目の急須(コーヒーサーバなどの他の容器でもOK)に入れます
- そこにクラッシュアイス(砕いた小さめの氷)を詰め込みます
- 氷が自然に溶けきるまで待つ(1~2時間程度)
- おいしい冷やし緑茶出来上がりです(涼しげなグラスに注げば、見た目も楽しめます)
お茶の歴史
日本のお茶は、平安朝の初期(約1200年前)、伝教大師(最澄) や弘法大師(空海)など、唐へ留学した僧侶たちによって中国から茶を持ち帰ったのが始まりとされています。その後、鎌倉時代に栄西禅師(1141~1215年)が中国から茶を伝えると共に「喫茶養生記」をあらわし、「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり」と喫茶の効能を宣伝したため、茶への関心が高まりました。
とくに有名な静岡県の茶は、駿河国栃沢(静岡県郊外)に生まれた聖一国師(1201~1280年)が、やはり中国から種子をもたらし、出生地に近い足久保にまいたのが始まりとされます。後に「駿河路やはなたち花も茶のにおい」と芭蕉によまれ、明治維新には、徳川藩士や川越人足等による大規模な牧之原開拓など、立地条件とあいまって、日本一の大茶産地となる基盤が作られ、現在では生産額・品質はもとより、流通面においても日本の茶業の拠点となっています。